日本型マネジメントはなぜ通用しないのか

2026.06.11

2026.06.11

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+++ 「文化の違い」では説明できない、本当の理由(前編)+++

多くの日本企業で、グローバル化はすでに “特別なテーマ” ではなくなっています。

海外売上比率の上昇、外国籍社員の採用、海外拠点との協働――。
規模の大小を問わず、多くの企業がグローバル環境への対応を求められる時代になりました。

しかし一方で、

「日本ではうまくいっていたマネジメントが、海外では通用しない」
「優秀な管理職ほど、海外で苦戦する」
「外国籍社員との間で認識齟齬が起きる」

といった悩みも増えています。

その際、原因としてよく語られるのが、「文化の違い」や「英語力不足」です。
もちろん、それらも無関係ではありません。
しかし本質的には、日本型マネジメントそのものが、“日本特有の前提条件” の上に成立していることも原因の1つです。

日本型マネジメントは「同質性」の上に成り立っていた

日本企業のマネジメントは、長い時間をかけて、日本社会の特性と共に発展してきました。

例えば、

  • 新卒一括採用
  • 長期雇用
  • 年功的処遇
  • OJT中心の育成
  • 暗黙知共有
  • 空気を読む文化

などです。

これらは、決して “悪いもの” ではありません。
むしろ、日本企業の強みを支えてきた側面も多くあります。

例えば、日本企業は、「高品質、チームワーク、現場改善、顧客対応、組織への忠誠心」などで、世界的にも高い評価を受けてきました。

しかし、これらが成立していた背景には、

同じ前提を共有する人たちが、長期間一緒に働く

という環境がありました。

つまり、日本型マネジメントは、高い同質性が前提の設計でした。

「言わなくてもわかる」が成立していた理由

日本企業では、

  • あえて言語化しない
  • 明確に指示しない
  • 空気を読む
  • 行間を察する

ことが、ある意味で “成熟したコミュニケーション” として機能してきました。

例えば、

この案件、少し慎重に進めましょう

という一言の中に、「実は反対している」、「リスクを懸念している」、「今は動くべきではない」といったニュアンスが含まれていることがあります。

日本人同士であれば、それを自然に理解できる場合も少なくありません。
しかし、グローバル環境では、この前提が崩れます。

外国籍社員にとっては、少し慎重にの意味が分かりにくく、

  • 何が期待されているのか
  • 誰が決定するのか
  • 何を優先すべきなのか

が明確でなければ、動きようがありません。

つまり、察する文化 は、同じ文脈を共有している組織では機能しても、多様性が高まるほど機能しづらくなります。

「空気」が制度を代替していた

もう一つ重要なのは、日本企業では長年、“空気” が制度の役割を代替してきたという点です。

例えば、

  • 明確なジョブディスクリプションがない
  • 責任範囲が曖昧
  • 評価基準が抽象的

といったケースが、その実例です。

それでも日本企業が回ってきたのは、「長期的関係性」、「相互理解」、「組織内信頼」、「暗黙の役割期待」が存在していたからです。

しかし、グローバルな組織では、

  • 多国籍
  • 高い流動性
  • 転職前提
  • 多様な価値観

が前提になります。

その中では、「役割」、「権限」、「期待値の明示」、「評価」、「意思決定プロセス」を、より明確にする必要があります。
つまり、グローバル化とは、「英語化」だけではなく、「組織運営の前提条件の変化」なのです。

優秀な日本人管理職ほど苦戦する理由

実際、海外赴任やグローバルプロジェクトで苦戦するのは、必ずしも能力の低い人ではありません。

むしろ、

  • 日本国内で高く評価されてきた人
  • 調整能力が高い人
  • 空気を読める人
  • 合意形成が得意な人

ほど、グローバル環境で戸惑うケースがあります。

なぜなら、日本で評価されてきたスキルが、そのままでは機能しない場面があるからです。

例えばグローバル環境では、管理職には、「自分の考えを明確に言語化する」、「役割を定義する」、「意思決定を明示する」、「対立を恐れず議論する」ことが求められます。

しかし日本企業では、真逆の、

「強く言いすぎない」
「和を乱さない」
「全員納得を重視する」

ことが重視される場面も多い。

つまり、個人能力の問題というより、どの環境に最適化されてきた管理職かの違いなのです。

本当に問われているのは、「マネジメントの再設計」

日本企業のグローバル化において、本当に必要なのは、
単に英語を学ぶことや異文化を知ることに加えて、

  • 意思決定
  • 権限
  • 評価
  • 対話
  • 役割定義

など、マネジメントそのものを再設計することなのかもしれません。

そしてそれは、日本型マネジメントを否定することではありません。
日本企業には、上述した、「チームワーク」、「誠実さ」、「現場力」、「長期視点」など、多くの強みがあります。
重要なのは、それらの強みはうまく残して、何を残し、何を変えるのかをグローバル環境に合わせて考え直すことです。

今回から、弊社のコラムのテーマを「グローバル」にしています。

次回は、

なぜ海外では “空気を読む” が通用しないのか
――ハイコンテクスト文化の限界

というテーマで、さらに具体的に、コミュニケーションとマネジメントの違いを掘り下げていきます。