+++ 「文化の違い」では説明できない、本当の理由(前編)+++

多くの日本企業で、グローバル化はすでに “特別なテーマ” ではなくなっています。
海外売上比率の上昇、外国籍社員の採用、海外拠点との協働――。
規模の大小を問わず、多くの企業がグローバル環境への対応を求められる時代になりました。
しかし一方で、
「日本ではうまくいっていたマネジメントが、海外では通用しない」
「優秀な管理職ほど、海外で苦戦する」
「外国籍社員との間で認識齟齬が起きる」
といった悩みも増えています。
その際、原因としてよく語られるのが、「文化の違い」や「英語力不足」です。
もちろん、それらも無関係ではありません。
しかし本質的には、日本型マネジメントそのものが、“日本特有の前提条件” の上に成立していることも原因の1つです。
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日本型マネジメントは「同質性」の上に成り立っていた
日本企業のマネジメントは、長い時間をかけて、日本社会の特性と共に発展してきました。
例えば、
- 新卒一括採用
- 長期雇用
- 年功的処遇
- OJT中心の育成
- 暗黙知共有
- 空気を読む文化
などです。
これらは、決して “悪いもの” ではありません。
むしろ、日本企業の強みを支えてきた側面も多くあります。
例えば、日本企業は、「高品質、チームワーク、現場改善、顧客対応、組織への忠誠心」などで、世界的にも高い評価を受けてきました。
しかし、これらが成立していた背景には、
「同じ前提を共有する人たちが、長期間一緒に働く」
という環境がありました。
つまり、日本型マネジメントは、“高い同質性” が前提の設計でした。
「言わなくてもわかる」が成立していた理由
日本企業では、
- あえて言語化しない
- 明確に指示しない
- 空気を読む
- 行間を察する
ことが、ある意味で “成熟したコミュニケーション” として機能してきました。
例えば、
「この案件、少し慎重に進めましょう」
という一言の中に、「実は反対している」、「リスクを懸念している」、「今は動くべきではない」といったニュアンスが含まれていることがあります。
日本人同士であれば、それを自然に理解できる場合も少なくありません。
しかし、グローバル環境では、この前提が崩れます。
外国籍社員にとっては、「少し慎重に」 の意味が分かりにくく、
- 何が期待されているのか
- 誰が決定するのか
- 何を優先すべきなのか
が明確でなければ、動きようがありません。
つまり、「察する文化」 は、同じ文脈を共有している組織では機能しても、多様性が高まるほど機能しづらくなります。
「空気」が制度を代替していた
もう一つ重要なのは、日本企業では長年、“空気” が制度の役割を代替してきたという点です。
例えば、
- 明確なジョブディスクリプションがない
- 責任範囲が曖昧
- 評価基準が抽象的
といったケースが、その実例です。
それでも日本企業が回ってきたのは、「長期的関係性」、「相互理解」、「組織内信頼」、「暗黙の役割期待」が存在していたからです。
しかし、グローバルな組織では、
- 多国籍
- 高い流動性
- 転職前提
- 多様な価値観
が前提になります。
その中では、「役割」、「権限」、「期待値の明示」、「評価」、「意思決定プロセス」を、より明確にする必要があります。
つまり、グローバル化とは、「英語化」だけではなく、「組織運営の前提条件の変化」なのです。
優秀な日本人管理職ほど苦戦する理由
実際、海外赴任やグローバルプロジェクトで苦戦するのは、必ずしも能力の低い人ではありません。
むしろ、
- 日本国内で高く評価されてきた人
- 調整能力が高い人
- 空気を読める人
- 合意形成が得意な人
ほど、グローバル環境で戸惑うケースがあります。
なぜなら、日本で評価されてきたスキルが、そのままでは機能しない場面があるからです。
例えばグローバル環境では、管理職には、「自分の考えを明確に言語化する」、「役割を定義する」、「意思決定を明示する」、「対立を恐れず議論する」ことが求められます。
しかし日本企業では、真逆の、
「強く言いすぎない」
「和を乱さない」
「全員納得を重視する」
ことが重視される場面も多い。
つまり、個人能力の問題というより、「どの環境に最適化されてきた管理職か」の違いなのです。
本当に問われているのは、「マネジメントの再設計」
日本企業のグローバル化において、本当に必要なのは、
単に英語を学ぶことや異文化を知ることに加えて、
- 意思決定
- 権限
- 評価
- 対話
- 役割定義
など、マネジメントそのものを再設計することなのかもしれません。
そしてそれは、日本型マネジメントを否定することではありません。
日本企業には、上述した、「チームワーク」、「誠実さ」、「現場力」、「長期視点」など、多くの強みがあります。
重要なのは、それらの強みはうまく残して、「何を残し、何を変えるのか」をグローバル環境に合わせて考え直すことです。
今回から、弊社のコラムのテーマを「グローバル」にしています。
次回は、
なぜ海外では “空気を読む” が通用しないのか
――ハイコンテクスト文化の限界
というテーマで、さらに具体的に、コミュニケーションとマネジメントの違いを掘り下げていきます。






