【長谷川コラム】映画から学ぶ「キャリアデザイン」&「リーダーシップ」4

「スターウォーズ6 ジェダイの帰還」
– 自分の「フォース」を知る方法 –

スターウォーズ「6」となっていますが、シリーズ第3作目でジェダイの若き騎士ルーク・スカイウォーカーを主人公とした旧三部作最後の作品です。

 

前回の「スターウォーズ4 新たな希望」では、古今東西の英雄伝説の基本構造、1.旅立ち(セパレーション)→2.試練(イニシエーション)→3.帰還(リターン)について書きました。脚本・監督のJ・ルーカスは、神話学者ジョーゼフ・キャンベルのこの研究成果を枠組みにして、スターウォーズの脚本を書きました。そして、この英雄になるプロセスは、まさしく現在のビジネスパーソンが「リーダーになる」、「自分らしく生きる」プロセスそのものだと説明しました。

 

ジェダイ騎士の能力の源泉「フォース」

今回は、「フォース」についてキャリア開発の観点から見ていきたいと思います。「フォース」とは、超常的な能力を持つジェダイ騎士の能力の源泉を意味しています。この言葉は、劇中で一番使われている言葉ではないでしょうか。例えば、こういうシーンで使われます。ジェダイや反乱同盟軍が出撃する際、「フォースとともに(May The Force Be With You)」と声を掛け合います。「Good Luck」と同じような使われ方です。また、ジェダイは死を「フォースとひとつになる」と表現します。オビ=ワンやヨーダがこの世からいなくなる(死ぬ)ことを、フォースに戻るととらえています。

 

製作総指揮のルーカスは、東洋思想に造詣が深いのだと思います。スターウォーズの「フォース」は、老荘思想の「道」の概念にとても似ています。「道」とは宇宙の根源・本源の力を指し、人間の認識を超え表現しようもないのでとりあえず「道」と名付けられています。人知では計りしれない、表現しきれない偉大なる力(Something Great)です。儒教ではそれを「天」(西郷隆盛の敬天愛人の天)と言い、般若心経(仏教)では「空」(色即是空 空即是色の空)と呼び、親鸞は「他力」(他力本願の他力)と表現しています。スターウォーズでは、その人知を超えたいわく言い難い偉大な力が「フォース」です。

 

その偉大なる力「フォース」は、ジェダイ個々人のフォースとつながっています。東洋思想でも同じように考えます。個々人のフォースは、もともと持って生まれたものなのですが、顕在化するには経験(修行)が必要です。また、その力は誤った方向に使われることもあります。不安、恐怖、怒り、憎しみなどの感情に支配された者がフォースを使えば、大変なことになります。その典型が、フォースのダークサイドを使っているダース・ベイダーです。

 

自分らしいキャリアの根源「キャリア・アンカー」

前置きが長くなりましたが、この「フォース」をキャリア開発の観点からみれば、E・シャインが提唱した「キャリア・アンカー」に似ています。「キャリア・アンカー(錨)」とは、自らのキャリアを選択する際に、最も大切にしている(どうしても犠牲にしたくない)価値観や欲求のことを言います。自分のキャリア選択の軸、根っこ、自分らしいキャリアの根源と言っていいかもしれません。

 

キャリア・アンカーは3つの要素から構成されています。以下の3つの問いの対する自分なり答え(自己イメージ)が、その人自身のキャリア・アンカーです。

 

1.自分の強みは何か?弱みは何か?(能力才能の自己イメージ)
2.自分は本当は何をしたいのか?何をしたくないのか?
(動機の自己イメージ)
3.自分は何をしているとやりがい・意味を感じるのか?
(価値観の自己イメージ)

 

では、どうしたら自分のキャリア・アンカーが明確になるのでしょうか?

 

その答えは、「行動する」ことと「内省する」ことです。

 

行動することなく、自分らしさの根っこを知ることはできません。自分自身が何に向いているのか?何が好きなのか?何をしているとやりがいを感じるのか?は、やってみなければわかりません。E・シャインも、この自己概念が自分なりに腹落ちするには、10年かそれ以上の実際の仕事経験が必要だと言っています。

 

映画でも、口だけで実際に行動することなしに「フォース」を身につけることはできません。ルークは修行中、マスター・ヨーダにこう叱られています。

 

「違う!やってみるのではない。やるかやらないかだ」(スターウォーズ5)
No. Try not. Do. Or do not. There is no try.

 

しかし、行動(経験)したからと言って、「フォース」に気づけるわけでもありません。自分のフォースは何なのか、自分のキャリア・アンカーは何なのか?を自問自答(内省)しなければなりません。その際、頭(理性)で考えるのではなく、心(直感)で感じるほうが正解です。「~すべき」とか「~のほうが得だ、損だ」とか頭で分析・検討するのではなく、自分が日頃うすうす感じていることにしっかりと耳を澄ませ、心で感じとることが大切です。

 

マスター・ヨーダは、「フォース」についてこうも言っています。
「考えるのではなく、感じるのだ」(スターウォーズ2)
Don’t think… Feel…

 

【作品】
製作総指揮:ジョージ・ルーカス
キャスト :マーク・ハミル ハリソン・フォード
日本公開 :1983年

 

 

長谷川 岳雄 氏
明星大学 特任教授   株式会社 みらいへ 代表取締役
1991年早稲田大学商学部卒業、2004年早稲田大学大学院アジア太平洋研究科国際経営学専攻(現 経営 管理研究科)修了。経営学修士(MBA) キャリアコンサルタント(国家資格) MBTI認定ユーザー。
1991年オリックス株式会社入社。法人金融サービス部門の営業に従事。その後、大学院修士課程を経て 人事部にて勤務。2003年株式会社みらいへ設立。明星大学でキャリア教育を実践するとともに、「キャリア開発」・「リーダーシップ開発」をテーマに企業研修講師、人事制度のコンサルをおこなっている。

この記事を書いた人
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