【長谷川コラム】映画から学ぶ「キャリアデザイン」&「リーダーシップ」3

「スターウォーズ4 新たな希望」編
– 旅立ち → 試練 → 帰還 –

スターウォーズ4-新たな希望-は、ジェダイの若き騎士ルーク・スカイウォーカーを主人公とした物語です。「4」となっていますが、シリーズ第1作目の作品です。大まかなストーリーはこうです。銀河系は、かつて統治していた共和国が崩壊し、新たに誕生した銀河帝国により恐怖政治で支配されています。その帝国軍に対し、自由を求め結集された反乱同盟軍とジェダイの騎士の末裔であるルーク・スカイウォーカーが戦いを挑む物語です。

 

英雄伝説に共通している基本構造

監督のジョージ・ルーカスは、神話学者ジョーゼフ・キャンベルの研究成果から大きな影響を受けたと語っています。キャンベルは古今東西の神話を研究し、世界の英雄伝説に共通している基本構造を発見します。単純化して説明すると、次の3ステップから成り立っています。

 

1.旅立ち・分離(セパレーション)
2.試練・通過儀礼(イニシエーション)
3.帰還(リターン)

 

英雄はまず、住み慣れた日常世界から、最初は二の足を踏みながらも超自然的な出来事に背中を押され、未知の領域に「旅立ち」ます。次に、その先で様々な「試練(困難・戦い)」に遭遇します。そこで、様々な人(女神、メンター、フォロワー)の協力を得て試練を乗り越え、最後には、新たな力を得て変身を遂げ、冒険から「帰還」します。英雄伝説は、古今東西この基本構成でできています。ギリシャ神話もラーマーヤナも大国主命も、桃太郎もガンダム(アムロ・レイ)もポケモン(タケシ)も、みんなこの3つのプロセスを経てヒーローになっていきました。

 

「スターウォーズ4 新たな希望」では、主人公ルークは、養父母である叔父叔母を帝国軍に殺害されたことをきっかけに、故郷の星から「旅立ち」ます。その後、帝国軍の軍事要塞デス・スターに捕らわれたり、師匠のオビ=ワン・ケノービをダース・ベイダーに殺されたり、反乱軍の基地がある惑星ごと葬られそうになったりと、様々な「試練・困難」に襲われます。エピローグでは、ダース・ベイダーとの戦闘機ドッグファイトを制し、デス・スターの急所にミサイルを命中させ、見事基地に「帰還」します。

この英雄になるプロセス(「旅立ち」→「試練」→「帰還」)を、ビジネスパーソンが成長していくプロセスとみることもできます。今回は、最初のフェーズ「旅立ち」について書いていきます。

 

1. 旅立ち

英雄は、これまで住み慣れた日常生活から、最初は躊躇するもののある出来事をきっかけに「旅立ち」ます。主人公ルークはオビ=ワン・ケノービに、「私と一緒に行かないか(レイア姫を助けにいかないか)」と誘われます。しかし、「行けるわけないよ、家に帰らなくちゃ」「今はできないよ、だって遠すぎるよ」と答えます。未来のヒーローにしてはあまりにも情けない断り文句です。しかしその後、叔父叔母を帝国軍に殺され天涯孤独となったことをきっかけに、旅立ちを決心します。

ビジネスパーソン版スターウォーズなら、新規事業の立ち上げ、悲惨な部門の立て直し、海外赴任、ラインからスタッフ部門への異動などが、「旅立ち(セパレーション)」に当たるのでしょうか。私も含めて大多数の方は英雄になることはないと思いますが、自分を成長させる、または、リーダーになる最初の一歩は、慣れ親しんだ仕事から未知の仕事へ、コンフォート・ゾーンからストレッチ・ゾーンへの旅立ちから始まるということは理解できます。

 

こう言葉で書くと、日常から非日常への「旅立ち」は簡単そうに聞こえますが、実際にはモヤモヤとした非常に苦しい葛藤を伴います。英雄(ビジネスパーソン)は、旅立ちに際して、そして、試練・困難の最中でも、以下のような問いを自問自答し、その答えがなかなか見えてこなくて苦しみます。

・自分は一体何がしたいのだろうか
・それは、それまでして実現したいことなのだろうか
・それは自分の能力で実現するだろうか
・自分の強みは何なのだろうか
・人はついてきてくれるだろうか
・この決断で本当にいいのだろうか
・ここで決断しなかったら、後で後悔するだろうか、どのくらい後悔するだ
ろうか

 

キャリア開発の観点から

スターウォーズをキャリア開発の観点から見ると、これらの問いを悶々と自問自答した挙句の自分なりの答えが、「フォース(Force)」です。スターウォーズでよく出てくるフレーズです。自分の中にある核となる力、その人らしさ・自分っぽさの根幹。このフォースが、旅立ちの背中を押し、試練を乗り越える中で磨かれ、帰還の際には自分の中で明確になっています。ヒーローは、旅の終わりにはひと皮もふた皮もむけて別人のように変身して戻ってきます。その変化の本質は、フォースがより自分の中でしっくりきているからなのです。

 

次回は、引き続きスターウォーズから「フォース(Force)」について、書いてみたいと思います。

 

【作品】
監督・脚本:ジョージ・ルーカス
キャスト:マーク・ハミル ハリソン・フォード
日本公開:1978年

 

長谷川 岳雄 氏
明星大学 特任教授   株式会社 みらいへ 代表取締役
1991年早稲田大学商学部卒業、2004年早稲田大学大学院アジア太平洋研究科国際経営学専攻(現 経営 管理研究科)修了。経営学修士(MBA) キャリアコンサルタント(国家資格) MBTI認定ユーザー。
1991年オリックス株式会社入社。法人金融サービス部門の営業に従事。その後、大学院修士課程を経て 人事部にて勤務。2003年株式会社みらいへ設立。明星大学でキャリア教育を実践するとともに、「キャリア開発」・「リーダーシップ開発」をテーマに企業研修講師、人事制度のコンサルをおこなっている。

 

 

この記事を書いた人
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