【長谷川コラム】 映画から学ぶ「キャリアデザイン」&「リーダーシップ」2

「プラダを着た悪魔」編  リフレーミング
– ものを見るメガネをかけ替えて、行動を変える –

とにかく、アン・ハサウェイが可愛い!メグ・ライアン以来の可愛いと思ったハリウッド女優さんです。映画も爽快感残るストーリーです。

 

運命のいたずら

田舎から出てきたジャーナリスト志望の主人公(アン・ハサウェイ)は、経験がないため希望の仕事につけません。ある出版社に応募し、運命のいたずらで最先端ファッション雑誌の編集長の第2アシスタントになります。ファッションにまったく興味はありませんが、家賃を払うための仕事、次のキャリアへの腰掛けと割り切ってその仕事を始めます。そのファッション雑誌の編集長がメリル・ストリープ演じるミランダです。この上司がチョー怖い。パワハラ、かつ、サディスティックな「プラダを着た悪魔」です。実際に私がこんな上司の下についたら、3日と持ちません。「働き方改革」なるものが進行している日本では、絶滅危惧種の上司です。

 

意味合い、行動を変える手法「フレーミング」

この映画のターニングポイントは、2つあります。ひとつ目は、アンディ(アン・ハサウェイ)が編集長からあまりにもひどい仕打ちを受けて、その直後にナイジェル(編集長の補佐役)に作業室で愚痴を言うシーンです。慰めてもらいたかったのだと思います。しかし、ナイジェルは厳しく言います。「じゃ、辞めろ」、「代わりは5分で見つかる。よろこんで働く子が・・・」、「甘ったれるな」と言われます。この会話がきっかけでアンディ(アン・ハサウェイ)は変わります。何が変わったのか?仕事に対する見方が変わります。これを、カウンセリング心理学の「リフレーミング」という概念で説明することができます。

 

「リフレーミング」とは、ものの見方(フレーム)を変えることによって、意味合い、行動を変える手法です。同じ事象でも違ったメガネ(フレーム)で見れば、違った意味合いになります。ひと言で言えば、「ものは考えよう」ということです。例えば、雨が降っているとします。「雨」という事象自体は意味を持たず無味無臭ですが、見るメガネによって意味合いが違ってきます。GWに旅行に出かける人にとっては「旅行を台無しにする雨」です。一方、日照りが続く田植え前の農家の方々にとっては「恵みの雨」です。アンディが、今やっている仕事を「些細なことに“ああだこうだ”と能書きを垂れているファッションなるもの」と捉えるか、「日々人が身にまとう、新たな美を生み出す芸術」と捉えるかで、その行動はおのずと違ってきます。最初のターニングポイントでは、仕事に対するメガネ(フレーム)をかけ替えたことによって、アンディの仕事に対する見方、そして、行動が大きく変化していきます。

 

選択(choice)

第2のターニングポイントは、エピローグ前のミランダ(メリル・ストリープ)とアンディ(アン・ハサウェイ)のやりとりです。パリの街を移動する車の後部座席で、ミランダがアンディにこう言います。「あなたは私に似てるわ」と。アンディは「私は違います」、「ナイジェルにあんな仕打ちはできない」と言い返します。ミランダ(メリル・ストリープ)は「あなただって、エミリー(第1アシスタント)にしたじゃない」。アンディはすぐに、それは「(あなたに命令されて)仕方がなかった」のだと答えます。

 

このターニングポイントを「キャリアデザイン」的観点から見ると、キーワードは「選択(choice)」です。アンディ(アン・ハサウェイ)は、劇中で何度か「仕方がなかった(I didn’t have a choice)」と言います。悪魔のような編集長に言われて選択の余地がなかったのだと。自分の選択を「仕方がなかった(I didn’t have a choice)」と捉えるか、「自分が選んだ(I chose it)」と捉えるか。自分の選択をどんなメガネで見るのかは、その人の行動に大きな影響を与えます。先ほどの車中のやりとりで、アンディは自分の行動に対する自分のメガネに気づきます。

 

 

この4月から、新たな道を歩まれている方も多いと思います。進学、就職、転職。その中で少なからずの方が、第1志望の道ではないはずです。自分のこれまでを振り返ってもそうだったように、大変失礼な推察ですが、第1志望ではない大学に、第1志望ではない業界に、第1志望ではない会社に、入学・就職している方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 

進んだ道をどのようなメガネで見ているか

その場合、自分の進んだ道を自分がどのようなメガネで見ているかを意識することは重要です。「仕方がなかった(I didn’t have a choice)」と捉えているか、「自分が選んだ(I chose it)」として捉えているのか。この大学しか受からなかったからこの大学に入学した(I didn’t have a choice)と見るか、実際にそうだったとしても自分が選んで入学した(I chose it)と見るか。第1志望の会社に内定をもらえず仕方なくこの会社に入社した(I didn’t have a choice)と見るか、実際にそうだったとしても自分が選んで入社を決めた(I chose it)と見るか。

 

映画のエピローグでは、アンディはアシスタントを辞め、ジャーナリストとして新聞社に応募します。その面接で面接官に、「(前職の雑誌編集部に)君のことを照会したら、編集長のミランダから“彼女を雇わなかったら、あなたは大バカ者だ”とファックスが来たよ」と言われます。最高の誉め言葉です。ラストシーンでは、アンディ(アン・ハサウェイ)がNYの街中でミランダ(メリル・ストリープ)を見かけます。ミランダも気づきますが無視して車に乗りこみます。そして、最後にプラダを着た悪魔が微かにほほ笑むのです。

 

【作品】
監督:デヴィッド・フランケル
キャスト:メリル・ストリープ、アン・ハサウェイ
日本公開:2006年

 

長谷川 岳雄 氏
明星大学 特任教授   株式会社 みらいへ 代表取締役
1991年早稲田大学商学部卒業、2004年早稲田大学大学院アジア太平洋研究科国際経営学専攻(現 経営 管理研究科)修了。経営学修士(MBA) キャリアコンサルタント(国家資格) MBTI認定ユーザー。
1991年オリックス株式会社入社。法人金融サービス部門の営業に従事。その後、大学院修士課程を経て 人事部にて勤務。2003年株式会社みらいへ設立。明星大学でキャリア教育を実践するとともに、「キャリア開発」・「リーダーシップ開発」をテーマに企業研修講師、人事制度のコンサルをおこなっている。

この記事を書いた人
GCRMは、Global Communication and Risk Management から付けられました。 ミッションは、企業のグローバル化の全面的な支援。 グローバルな環境での個別のニーズにあわせたサポートをいたします。